読んだ本〜『他力』(五木寛之 著、幻冬舎文庫) [本・雑誌]

「結局、最後のところは、やはり<他力>ということなんだろう」という文章から始まる。

『いまを生きる力』
http://amoki-san.blog.so-net.ne.jp/2009-11-12-1
『人生の目的』
http://amoki-san.blog.so-net.ne.jp/2009-11-24
『人間の覚悟』
http://amoki-san.blog.so-net.ne.jp/2009-11-27
と続けて読んできた。

五木は、一連のテーマである「我あり、ゆえに我思う。それでは、我がいま在るのはなぜか? 生きる支えは何であるのか?」について、<他力>という仏教の哲学(場合によっては印哲にも言及している)をもとに、本来、極めて難解なはずのことがらを分かりやすくかみくだいて、しかも平明かつ明瞭な文章で説明をしてくれる。

おそらく本書もまた、今後、私の座右の書になるのだろう。
本書は100のテーマ(見出し)をもって構成される。

本書の解説で解説者松永伍一氏が感動したのは、次のテーマであるという。

68 母親をリヤカーに乗せ、弟や妹の手を引きつつ
71 人はみな泣きながら生まれてくる
72 「わがはからいにあらず」というつぶやき
80 正統は異端の艶やかな光に照らされる
84 「しゃべれ、しゃべれ、ものを言え、言え」
91 いま大切なのは<励まし>ではなく<慰め>

同じ箇所で私も、松永氏と同様に胸が詰まった。

さらに、私は、次のテーマを加えたい。
4 <本願他力>こそ生命力の真の核心
7 目にみえない大きな力を実感する
8 向こうからやってくるもの
17 生きている人間はすべて病人である
24 本物のプラス思考は、究極のマイナス思考から
26 目に見えない大きな宇宙の力
37 深く悲しむ人ほど強く喜ぶことができる
45 信仰や本当の情報は<面授>でしか伝わらない
75 「酒はこれ忘憂の名あり」の至言
98 ふたりで歓べば歓びが二倍になる

本書のタイトルである<他力>。
いままで私は、「他力本願」の意味をまったくもって誤解していた。
「棚からぼたもち」あるいは、「あなたまかせ」「人頼み」「無責任」的な、表層的な理解しかしていなかった。

「為せば成る。為さねば成らぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり」(上杉鷹山)が好きなことばのひとつだった。
「自助努力」「自己責任」。
これこそ、小泉改革のテーゼのひとつであり、アメリカンドリームを推進してきた彼らの信条でもあっただろう。

はたして、昨年のリーマンショック、新自由主義(市場原理主義、ハゲタカ強欲資本主義?)の大失敗で明らかとなったのは、「自助努力」「自己責任」ということばの甘い罠。
あるいは、アメリカの伝統的な精神的支柱であったピューリタニズムの精神は、どこに消えた? という突っ込みを入れてもよいだろう。

もとより、五木もこの「天は自ら助くるものを助く」の精神をまったく否定するものではない。
しかし、それだけでよいのか?
その背後にある「何ものか」を想像してみよ、と私たちに問い掛ける。

その「自助努力」の姿勢、「人事を尽くして天命を待つ」という言葉ですら、「人事を尽くすは、これ天命なり」と五木は読む。
死にものぐるいで何事かを行うこと、それじたいが<他力>のはからいなのではないか、と。

私たちを突き動かす<力>。
「生きよ!」と呼びかけてくる<力>。
<他力の風>が吹くとき、<わがはからいにあらず>と思えるようになりたい。

私がこの病に罹ったことも、なにかのはからいであったのかもしれないとも思える。
場合によっては、脳梗塞を起こしていたかもしれない。
心筋梗塞、あるいは動脈瘤をおこしていたのかもしれない。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍だったかもしれない。

たまたま私のばあいは心の病だった。

何冊かのうつ病の本を読み、Mさんに教えてもらった免疫学の安保徹先生の著作を通じて「38億年の生命系と一個の人生系が凝縮された(あるいは併存した)存在が、ほかならぬ私である」ことを教えてもらった。

自律神経というものの大切さ、交感神経と副交感神経の「バランス」こそが大切であることを安保先生に教えてもらえた。

そして五木の本に出会い、<他力>に辿り着いた。
まさに、この著作を通じて、五木の<面授>を受けているような気がする。
ここに辿り着くために、この病気になったのか?
そんな気さえする。

などと言いながら、75番目のテーマのタイトル「「酒はこれ忘憂の名あり」の至言」に、「やっぱ、そうだよね〜。人生、酒、飲まなくっちゃ。楽しくね〜♡」などと反応してしまう自分が情けないw
(なお、この「酒はこれ忘憂の名あり」の内容は、そんな「酒飲んで、ウサを晴らせ」などと書かれているわけでは決してない。親鸞のお説教の内容が書かれている)
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